【小説】ミリオネア清掃員下村龍之介 ⑨


〜 この小説をコインチェックで知り合えた仲間に捧ぐ 〜

第九話 親友

オレの名は下村龍之介。

人情に熱いミリオネア清掃員だ。

財津梅子に会いにサイン会の列に並んでいたが、

ついにオレの番が回ってきた。

「お名前を教えてください。」と梅子が言うので、

「下村龍之介です。」と言うと

それまで筆ペンで流れ作業のようにサインをしていた手がピタッと止まって、なんだかあたりがシーンとなったような気がした。

「り・龍之介?」と梅子はオイラの顔を見て再び訪ねたから・・

「そうだ。最終学歴へちま学園の龍之介だ!!」とギャグのつもりで言ったら、

梅子はオイラになりふり構わず抱きついてきて号泣し始めた。

3分ぐらい梅子の嗚咽だけが、空港のイベント会場に響いた・・

彼女は何も言わなかった。

3分後、正気を取り戻したようで、サインを開始し始めた。

オイラの本の裏表紙にはサインではなく、携帯電話番号が特大で描かれた。

「午後2時までここを離れられないから、2時過ぎに電話ちょうだい!」

とだけ言って、次の人のサインを始めた・・

オイラは喫茶店でコーヒーを飲みながら続きを読み始めた・・

梅子は母子手帳の『おっぱい良好でした。』の文字を見て、今まで母を呪い続け、自分が不幸なのは全部母のせいだと思ってきた事を後悔した。

母は私を嫌いだったわけではないんだ・・

母は私を抱いておっぱいを飲ませてくれてたんだ・・

そして、この日、梅子は自分がつけていた心の叫びノート、つまりへちまノートを全て捨ててしまった。

これからは自分がへちまノートだ。

そして名前を『へちま』に変えたのだ。

本のエピローグはこんな言葉で締めくくられていた。

『泣きくれる思いをしたまま

私の人生失敗だった。と嘆くか、

これも経験と捉えるかで、明日は変わります。

真っ黒だったはずのオセロのボードを、

考え方や捉え方一つで真っ白に変える事だってできる。』

なるほど・・

時計をみると14時を少し回っていた。

本の裏表紙に書いてある携帯番号に電話をしてみた。

「龍之介だけど、今空港の2階の喫茶店にいるんだけど、」

と伝えると・・

「わかった。」とだけ言って梅子は切った。

すると、すぐに彼女は現れた。

おかっぱ頭の梅子しか知らないので、今風のお洒落なおばさんになっている梅子に何だか笑えてきた。ww

彼女は開口一番こう言った、

「探したんよ、かなり大掛かりに探したけど見つからんかったから、もう死んでると思ってた」

「オレは元気だぞ。ww」

30年以上も会ってなかったが、その期間が嘘のように普通に会話をした。

それから3時間くらいお互いの今までの話を語りあった。

彼女には子供が5人いて孫が12人、そしてもうすぐひ孫が生まれると言っていた。

ロスチャイルド並みの大家族である。ww

オイラも色々な投資をしている話や今、清掃員で真面目に働いている話などをした。

ものすごく気持ちが良かった。

おそらく、一緒に命を掛けて戦った兵士が何年かぶりに会うとこんな気持ちになるんではないかな?と思った。

二人はまた会う約束などもせずに別れた。

オイラは週に1回生きてる事の確認のためにメールをする事を約束させられた。

そして、梅子は別れ際にこう言った、

「あそこから連れ出してくれて本当にありがとうございました。」

オイラの2017年は梅子との再会から始まった。

そして、龍之介がこの1年後に10億を超える金を手にする事はまだ誰も知らない・・

つづく・・はず

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