【小説】ミリオネア清掃員下村龍之介 17


〜 この小説を手術直前のママ子姉に捧ぐ 〜

第十七話 料亭

オレの名は下村龍之介。

最近、影が薄いミリオネア清掃員だ。ww

雑賀経済研究所に就職した坂本イユは日々淡々と仕事をこなしていた。

日々の仕事は電話での会員獲得であった。

そんなある日・・

「坂本さん、ちょっと・・」

社長の秘書からの呼び出しであった。

「今日、仕事が終わって夕方の7時にこの料亭に行って。社長からの歓迎会みたいなもんだと思うわ。」

秘書は坂本に地図と店の名前の書いたメモを渡した。

料亭の名前は『三木亭』だった・・

坂本は仕事を終え地図を見ながら三木亭を探した。

そして、着いた。

とてつもなく大きな料亭であった。

店の前に立っていたら一人の老紳士が声を掛けてきた。

「失礼ですが、坂本イユ様ですか?」

「あっ、ハイ。」

「雑賀様から7時頃に坂本様がおみえになるからご案内するように言われてます。さあ、どうぞお入りください。」

部屋に通された。凄い店であった。

「雑賀様は30分ほど遅れるとの事です。後ほど女将がご挨拶に参ります。では、失礼します。」

中庭、床の間にある掛け軸、花瓶、そんなものに興味のないイユでも一流品だとすぐにわかるような代物だった。

「いらっしゃいませ。」

「ここの女将をやらせていただいてます。キヨと申します。」

「あっ、あの私、坂本イユと申します。」

着物姿の女優のような美人が入ってきた。

「そんなに緊張されなくて、いいんですよ。雑賀さんからうかがっています。」

「十七・八の娘さんなのに株の世界で勝負したいって珍しい子が入社したって、若いのによく仕事ができる頭の良い子だと褒めてましたよ。」

「社長が私を・・ですか?」

「ええ!」

「でも、社長は私が入社してから一度も会社に来られてないんですよ?」

「顔は出さなくても情報は取れますよ。秘書もいますからね。」

「どうして、そんなに若いのに、相場の世界なんかに入ろうと思ったの?」

「私の事をお話しする前に女将さんと雑賀社長のご関係をお聞かせ願えませんか?」

「あら?私の事を信用してないのね?」

「そういうわけではありませんが、自分の身の上を話すというのは相手に全てを晒すという事です。」

「もし、社長から私の生い立ちを聞き出すように頼まれたのだとしたら、女将さんと社長のご関係も特別なものかなと思いましたので・・」

「なるほど・・あなた噂どおり賢い子ね。いいわ・・じゃあ私から話すわね・・」

「私と雑賀さんが知り合ったのは三十数年前。」

「雑賀さんがサラリーマンを辞めてプロ相場師として駆け出しの頃よ。」

「当時、雑賀さんはある仕手戦に失敗して大きな借金を背負っていたの。」

「相場の世界では若い頃の借金は出世払いが常識だけど、責任感の強いあの人は責任を痛感して死んで詫びようと考えたのね・・」

「真冬のある寒い日、兜町の証券取引所のそばにある三木橋から日本橋川に身を投げようとして、橋の欄干に片足を掛けたところに偶然、私が通りかかったの・・」

「その頃、私は浜町の芸者だった。水天宮の小料理屋に連れて行って熱いチャンコ鍋を食べさせて事情を聞いた。」

「そして、その頃の私のお客さんで飛ぶ鳥を落とす勢いの有名な小豆相場師がいたので、その相場師に弟子入りさせたのね。」

「小豆と株の違いはあるけど相場師の心構えを一から学び資金の援助も受けて、もう一度仕手戦を仕掛けたのね。」

「その銘柄は”ひらぞう精密機械”という銘柄でこれが大成功。」

「兜町に雑賀正義あり。と認められて、以後いくつかの相場を張って全て成功に収め伝説の相場師といわれるようになったのね。」

「その小豆相場師は池畑慎之介と言って、孫のような子供を預かって育てていると十数年前ハガキが来たきり音信不通なんだけどね。」

「そして、雑賀は今のオレがあるのは女将のおかげだ。と言ってこのお店を買ってくれたの。私は二人の出会いを忘れないためにこのお店の名を『三木亭』という屋号にして今日までやってきたのよ。」

「雑賀正義ってのはそういう男よ。世間ではとやかく言われているけど、義理に厚く筋を通す人間よ。だから、あなたはこの会社に入った事は正解だと思うわ。」

「良い話をありがとうございました。」

「じゃあ、次はあなたの番よ。どうして相場師になりたいの?」

さて、次回、坂本イユの生い立ちが自分の口から語られます。

池畑慎之介を中心に回る不思議な人間関係も今後の見所です。ww

では、では・・

つづく・・はず

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