【小説】ミリオネア清掃員下村龍之介 20


第二十話 ネタ玉(ねたぎょく)

オレの名は下村龍之介。

忘れた人もいるかと思うが、ミリオネア清掃員だ。

北海道の網走で瓜生剛三から資金提供の約束を付けて帰ってきた。

雑賀正義に報告に行った。

「坂本よくやった。よくぞ瓜生グループを今回の仕手戦に引っ張り出してくれた。」

「はい。社長、これで今回の仕手戦の資金は充分なのでしょうか?」

「ん?仕手戦の必要資金なんてやってみなけりゃわからんよ・・仕手なんて不測の事態の連続だからな。」

「はい。」

「仕手戦で一番難しいのは、銘柄選びでもなければ資金調達でもない・・仕手戦というのはある銘柄を安値で買い、意図的に操作して高値に買い上げてその高値のまま売り抜けて儲けることを言うんだ。」

「そうですね。」

「高値に買い上げるだけなら銭さえ持たせれば相場に無知な小学生だってできる。証券会社に電話して買い注文を出し続ければ株価はどんどん高くなる。そうだろう?」

「はい。」

「だが、その仕手筋も例外なく苦しむのは仕手戦の最終段階で高値のまま売り抜けることなんだ。」

「そうですね。高値を買ってくれる人がいなければ仕手戦は成立しませんからね。」

「そのために我々仕手屋は無数の騙しのテクニックを使うんだ・・強欲な投資家を口八丁手八丁で騙して高値の玉を大量にハメ込む。投資家ならば誰でも高い株は買いたくない・・だから騙して高値を売り抜くしか方法はないんだ。」

「今のお話、身体の奥底まで言い聞かせておきます。」

「掴ませれた方は大変だ。筋が売り抜けた株など何の価値もない、ただ下がるだけのボロ株になってしまうんだ。

「今度の仕手戦、具体的なことを聞かせてください。」

「銘柄は相当前から決めてある。ネタ玉はもう安い所をゴッソリと仕込んである。その玉は前に誰かが仕手戦をやりかけて途中で筋に問題が起きて投げ出したかたまりなんだ。」

「・・・」

「それがある株担保業者の金庫に眠っているのを俺が偶然見つけたんだ。俺はその株担保業者と交渉して大底値圏でその株を全部引き取った。」

「ネタ玉ってよく聞く言葉ですけど・・」

「仕手戦の成功はネタ玉の量で決まるとも言われるほど、ネタ玉の役目は重要なんだ。例えば大底値のネタ玉を大量に仕込むのは・・全体の平均買い単価を低くする意味もある。そうすれば利食う時期も早く利幅も取れる。他にも過剰な提灯買いに売りぶつけて相場を冷やしたりするのもネタ玉の重要な役割だ。また、対外的には冷やし玉の売りぶつけと見せかけておき・・実際には大幅な利食いを入れるのも仕込み単価の低いネタ玉が会っての芸当となってくる。一口に仕手戦というが、ただ買いあがるだけじゃなく、色々なテクニックが必要となるのだ。」

「わかりました。最後に今回の仕手戦の銘柄は?」

「東証二部の日の丸物産だ。」

日の丸物産・・何度も倒産の危機に直面しているボロ株でその日の終値は247円だった。

・・さて、雑賀正義、瓜生剛三、坂本イユそれぞれの思惑を巻き込んで仕手戦がスタートします。

次回から地獄の仕手戦編がスタートです。

では、では、

つづく・・はず

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